何故格差が広がるのだろうか?
トマ・ピケティの「21世紀の資本」が評判です。世界で150万部(2月2日朝日新聞)売れてるそうです。私も、読み始めたところです。格差問題に火がつきつつあります。
何故資本主義下で、格差が生じるのでしょうか? そもそも格差は何故生じるのでしょうか? いろんな要因が考えられ、考えればきりがありません。
ピケティの回答は、資本主義下で「資本収益率が経済成長率を上回ってきたから」です。私なりに単純化して言えば、配当、利息、地代等の財産による所得が、労働による所得を上回っているから、格差が生じるというものだと思います。
労働による所得にも格差がありますが、資本(財産)による所得で格差が生じると「不労所得」のように感じるので不当感が大きくなります。書評等を読んだ感じでは、ピケティは、この「不労所得」を不当とする感覚を刺激しているように思われます。
ピケティは、対策として、相続税・累進資産税・累進所得税等が重要になると言っているうようです。この対策は、第1次的に格差が生じるのはやむを得ないので、第2次的に税金で吸い上げて再分配しようという考え方です。つまり資本主義を肯定し格差が生じる仕組み自体はやむを得ないとしつつ、再分配で修正しようとするものです。またピケティは、国際的な税制を言っています。グローバル資本主義を維持しつつ、財産による収益をグローバルに規制して再分配しようということです。
賛否両論あるようですが、庶民感覚にはあっており、燎原の火になると思います。これが、どこまでエネルギーとなるか未知数ですが、格差発生の根本原因と国際的条件をきちんと吟味していかないと、不完全燃焼になるようにも思います。
ただ、不完全燃焼でも再燃することはありますから、国際的規制など現実的に無理だで済ませることもできないと思います。ユーロですら極めて難しいので、困難なことは明らかですが、方向性を示していることは確かだと思います。
私にとっても、読んでみてのお楽しみなのですが、何故「資本収益率は経済成長率を上回る」のか?ここが基本的な問題だと思います。資本主義がこの格差を自動的に生むとするなら、そのメカニズムを明らかにして欲しいところです。それが示されていれば、21世紀の「資本」ではなく、21世紀の「資本論」になると思います。
なお、威勢良く書きましたが、「資本論」は長らく挫折中ですので、せめて「21世紀の資本」は挫折しないで近日中に完読したいと思います。
弁護士 山越 悟